ホーム>豆知識

宮城県七ヶ浜町は、仙台市から車で30分くらいで行ける東北・北海道で一番小さい海沿いの町です。その昔、海沿いに7つの集落があったことから「七ヶ浜」と名づけられました。「minatohama・湊浜」「matsugahama・松ヶ浜」「shobutahama・菖蒲田浜」「hanabuchihama・花渕浜」「yoshidahama・吉田浜」「yogasakihama・代ヶ崎浜」「toguhama・東宮浜」この7つの浜では、三方が海に囲まれていることもあり、四季折々のいろいろな景色と出会えます。花渕浜地域を「はなぶし」と呼ぶ人は、きっと地元の方か七ヶ浜にゆかりのある人です。

海水浴(うみみつあみ)

菖蒲田海水浴は、1888年に東北で初めて日本で三番目に開設されています。海水浴は、もともと治療法の一つで「潮湯治(しおとうじ)」と呼ばれていたそうです。「海水浴(うみみつあみ)をする人の心得」という記録があり、菖蒲田海水浴場開設当時に併せて建てられた保養施設「大東館」では、多くの人が「うみみつあみ」を楽しんだのではないでしょうか。現在、残念ながらこの大東館はありません。大東館跡地の眺望崎には、東日本大震災復興メモリアルモニュメントが設置されています。津波被災の教訓、菖蒲田海水浴場や大東館の歴史はみらいに残したいですね。

皇室献上実績を持つ浜の海苔

記録によると七ヶ浜では1929年に海苔の養殖がはじまりました。外洋での浮き流しによる海苔養殖の開発し、収穫量をあげた七ヶ浜の海苔養殖は、品質・量ともに全国にその名を知られるようになりました。平成に入ると、菖蒲田浜漁協組合員の有志が海苔の処理施設を共同出資して建設。この協業化は、東北で初めての取り組みです。東日本大震災で壊滅的な被害を受けたときも、海苔養殖を行う協業グループを作り、難局を乗り越えてきました。2019年には仙台港重油流出事故により一時期は生産中止に追い込まれましたが、現在は、安全性が確認され海苔養殖が再開されています。令和になっても愛される浜の海苔。乾海苔・焼海苔・味付海苔・海苔佃煮・・・一度はお試しください!!

ボッケ(ケムシカジカ)

七ヶ浜町の名産。地域によっては呼び名が異なりますが七ヶ浜では「ボッケ」と呼ばれています。このボッケはケムシカジカで毎年10月中旬から11月中旬にかけて旬を迎えます。分布域は、島根以北の日本海と東北以北の太平洋とベーリング海までに及びます。収穫期のメスには卵がたくさん入っていて、ボッケ汁など鍋物や汁物として食べられる場合が多いです。新鮮なボッケは刺身がオススメです。厚みのある白身はフグのような食感があり、薄造りにするとおいしいです。七ヶ浜町観光キャラクターはボッケがモチーフです。「ぼっけのボーちゃん」やピンバッチやボーちゃん焼きなどいろいろなところで親しまれています。

小さな町の大きな貝塚

縄文時代の貝塚や遺跡は、40数箇所もあります。なかでも「大木囲貝塚」は、1968年(昭和43年)に 国の重要文化財にも指定されていて、その広さは東京ドーム約4個分と日本最大級です。大木囲貝塚から出土される大木式土器は、東北地方の縄文式土器の年代を決める基準にもなっているとのこと。縄文時代は、都心の繫華街のような街並みだったかもしれませんね。現在は、公園として開放されていて、隣接している歴史資料館では、出土品をはじめ、町内の遺跡や貝塚から出土した考古資料や漁具や農耕具など七ヶ浜の生活を伝える民俗資料を観ることができます。 

選ばれる避暑地

「日本三大外国人避暑地」をご存知でしょうか。山の軽井沢、湖の野尻湖そして『海の高山』は七ヶ浜にあります。歴史を振り返ると、江戸時代には仙台藩主伊達家の遊覧地となり、伊達政宗が松ヶ浜でもっとも眺めの良い鴻ヶ崎(こうがさき)に仮館を建てさせたと言われています。その後、鴻ヶ崎はお殿様の仮館が建つところという意味から『御殿崎(ごてんざき)』と呼ばれるようになり、その地名が今も残されています。また、昭和天皇が来県したのを記念して君ケ岡公園を御用邸敷地として献納する話もあったようです。訪れた人はその自然ゆたかな街並みに心をいやされているのではないでしょうか。

明治時代から続く西洋野菜の栽培

明治時代の1890年。高山外国人避暑地へ供給するために管理人がアメリカから種子を手に入れて西洋野菜が栽培されていたと記録が残っています。なかでも「ルバーブ」は、1920年代に野尻湖や軽井沢など外国人避暑地周辺で在外外国人向けに栽培が広まっています。生ではセロリのような食感と強い酸味がありますが、熱を加えると溶けてジャムやパイ、プリンなどデザードに加工しやすいのが特徴です。肉料理やピクルス、梅干し代わりにおにぎりや茶漬けも。しちがはまのお店でルバーブを使ったお料理に出会ったら是非お試しください。(ルバーブのメニューを取り扱っているお店:SEASAWさん、Cafe La Lunaさん)

時代を越えてアニメに登場

海上安全・航路の守り神として信仰されている「鼻節神社」。地区の旧家に残されている「鼻節大明神御縁起」によると、今から約2,400年ほど前の第6代孝安天皇(前392-前291)の時代に、猿田彦命(さるたひこののみこと)を祭神として花渕浜吼坊ヶ崎に勧請し創建されたと伝えられています。平安時代に、全国の神社を調べた古い記録の延喜式内神名帳にも名前があり、名神大社(みょうじんたいしゃ)に属する位の高い由緒ある神社です。清少納言の『枕草子』や『朝野群載』にも記録があるそうです。この由緒ある鼻節神社は時代を越えて漫画「かんなぎ」に登場。アニメ化もされていて、かんなぎファンの間では「聖地巡礼」として、親しまれています。

文化・芸術・音楽・舞台・コスプレ

めぐまれた自然環境と外国人避暑地を訪れる外国人との交流の歴史を背景とした町の文化創造拠点「七ヶ浜国際村」。ここでは、文化、芸術、音楽、舞台の他、貸切コスプレ撮影の会場になることも。多種多様なイベントが催され、姉妹都市プリマスのアメリカ開拓史ミュージアム「プリマスハウス」も隣接しています。天気のいい日は国際村ホール屋上からの街並みをご覧ください。

<参考資料>

七ヶ濱郷土史(おらほの仙台火力発電所プロジェクトチーム)

七ヶ浜町誌増補版(七ヶ浜町)

七ヶ浜町観光ガイドブック(七ヶ浜町産業課)